春夏秋冬 第三話 「事故と復活」
「純一!純一!」


彼女は病院で叫んでいた。





彼女を家まで送り届けたあと、彼は自宅へ車を走らせていた。
ある大通りの交差点で信号待ちをしていたときだった。
対向車線から大きな大型車が来た。
そのトラックは、急に方向性を失い、純一の車に正面衝突した!
救急車が来たときには、純一は既に意識不明の重体状態。
あとで調べてみると、大型車の運転手は飲酒運転の常習犯。
今まで事故は起こさなかったものの、今回ついに事故を起こしたのだ。
その相手が、不運にも純一だったのである。




彼女は彼の無事を祈った。祈り続けた。








しかし、神は彼女に微笑まなかった。
医師の努力も報われず、彼は永遠の眠りについた。







彼女は泣いた、ただ泣いた。
泣きたくなくても涙が溢れてきてしまう。
運転手を憎んだ。許せなかった。
どんなに謝罪されても許せない。
ただ、彼を失った悲しみはそれよりも大きかった。
彼女は絵を描くことをやめてしまった。
何にもできなくなってしまった。
仕事先にも顔を出さなかった。
仕事先のケーキ屋の店員はみんな心配したが、彼女の復帰をみんな願っていた。
だが、彼女は家でうつむくばかりだった。







しばらく経ったあと、彼女は彼の両親から頂いた遺品を見てみることにした。
ダンボールを空けると、そこには筆、絵の具、パレットと言った、絵を描く道具が収められていた。
彼女は彼の言葉を思い出した。




「一流の画家になりたい。「春夏秋冬」という絵を描きたい。」









彼女は絵を描いた。ひたすら描いた。
絵を描くことで彼と一緒になれると思ったのか、ただ絵を描き続けた。
すると、次第に彼女は元気を取り戻していった。
仕事にも復帰した。
絵も描いた。
それだけではない。
彼女の絵は、以前よりも数段素晴らしいものになっていた。
彼女は、ただ描き続けた。


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