春夏秋冬 第二話 「海岸」
10月8日。二人は井宮海岸。
雲一つない・・・・わけではなかったが、晴れた日だった。
二人はいつも通り絵を描いていた。
広がる砂浜と、おだやかな海。
「俺もいつか画家デビューしたいなぁ。デビュー作はそうだな・・・・「春夏秋冬」だな・・・・」
「なんで「春夏秋冬」なの?」
「この海岸なんかもそうなんだけど、季節によって、一つの場所でも景色が大分違うじゃん?
ここも夏は人で賑わうけど、今ごろになると涼しくて誰も来ていない。」
「山も緑や紅葉、雪景色で季節が違うね!」
「そう。その季節の移り変わりをこの筆で画用紙に写したいんだ。」
「いいね!頑張って!!」
彼は自分の夢を持ち続け、彼女もまたその夢を応援していた。
彼の絵の力は次第に大きくなっていき、評判も良くなっていった。
実力を付けると共に自信も増え、彼は画家としての一歩を踏み出そうとしていた。
帰りの車の中、会話ははずんでいる。
「もし俺達の間に子供が生まれたら、きっと絵が上手いだろうな」
「そうだね〜」
「はぁ〜腹減ったなぁ。どっかで食べてく?」
「あっ 私いいお店知ってるよ〜」
純一は綾乃を家まで送り届けた。
「来週は仕事あるもんで、ちょっと絵描きはオフにしよう。」
「うん、わかった。じゃぁね〜おやすみ」
「おやすみ〜」
午後七時過ぎ、彼は家に向かって車を走らせていた。
その時、事件は起こった