狂歌 六話
「警視〜 こんなとこで手がかりが見つかるとでも?
 ここは見放された場所ですよ?」

「こんなところでも、情報はあるさ。
 っと・・・あれはっ!」

川崎は倒れている人の姿を認めると、即座に走り出した。
それに笹川も続き、彼の元へ駆け寄る。

「撃たれたんでしょうかね・・・ まだ息はあるみたいですよ。」

「笹川、さっさと救急車を呼べ。
 うまくいけば、手がかりを見つけられるかもしれん。」

「はいはい。」












目が覚めた。

頭上には白い天井と、何人かの人。



「・・・目が覚めたか。」

彼は少し混乱した。
何故自分は病院にいるのかと。
そして、この人は誰だろうか。

「・・・貴方達は?」

「警察の者です。 撃たれていたところを発見して、すぐに病院に通報しました。」

「そうですか。」

「起きたばかりのところ悪いですが、少しお話を聞きたいのですが。」

彼は少しばかり頭を捻ったが
すぐに言葉を返した。

「・・・いいですよ。」

川崎はその返事を聞くと手帳を取り出し、問い始めた。

「先ず、貴方は何であそこに居たのですか?」

彼は考えるふりをして、質問に答えた。

「呼び出されて、あそこに行ったらいつの間にか・・・」

思わず彼は嘘を吐く。
しかしそんなことは刑事にはわからない。

「次に、何故貴方はナイフや銃を持っているんですか?」

この質問には彼は少し動揺した。
それを見せないようにと、すぐに彼は答えを返した。

「・・・はて?  私は何も持っていってませんが。」

「全て、貴方の指紋が付いているんですよ。」

「私は知りません。」

本当に知らないように見せるように、彼は上手く取繕った。
それを聞いた川崎は、溜息を吐いて言った。

「そうか・・・  ありがとう。
 この銃とナイフは犯人の重大な手がかりだから、持って行くよ。」

「はい、どうぞ。助けていただきありがとうございました。」

その言葉を聞いて少し微笑んだ川崎は、部屋の外に出た。



「どうでした? 警視。」

部屋の外で待っていた笹川は川崎に問いかけた。

「まぁ、微妙ってところだな・・・」

「連続通り魔である線は?」

「態度、挙動からすると少ない。
 だが・・・ 俺の勘じゃ濃厚だ。指紋の件も怪しい。」

「警視の勘でねえ・・・」

「まぁ、考えても仕方ないし飲み行くぞ。」

「いいですねぇ。 奢って下さいよ?」

「しょうがないなお前・・・ んじゃ、行くか。」






白い天井
全てが白い。

飾られている花はアネモネ。


もう、春か。



・・・花言葉は、「見捨てられた者」だっけな。





僕は死ぬのが怖かったのか?
あれだけ殺しておいて。

自分の身は惜しいってか。
我ながら醜いよ。




幸せを憎んで 嫉妬して 奪って

僕は自分の為に・・・  



――自分の為に?


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