狂歌 五話
神様なんていないんだ。
僕はそういつも呟いていた。

神様がいるなら


僕は手を血に染めなかっただろうから








「笹川!」

川崎が少し遠くに居る部下を呼ぶ。
すると呼ばれた部下は気だるそうに彼の元へと向かった。

「やっと起きたんですか。 一日中寝っ放しでしたよ。」

「徹夜三日すりゃそうなるさ。 さ、捜査行くぞ。」

「え〜? また行くんですか・・・」

「さっき起きて事件書類見てたんだが、どうやら結婚式で爆弾騒ぎが起こったそうじゃないか。」

「そうですね。 まぁ、通り魔とは関係ないでしょう。」

「そうか? 俺は通り魔と関係あると踏んでいるがな。」

「なんでですか?」

「そりゃま、時期が重なりすぎてんだよ。」

適当に川崎は言った後、立ってコートを着始めた。

「さっさと捜査行くぞ。 笹川。」

「はいはい・・・」

だるそうに笹川は言うと、川崎に続いた。






僕は卑怯者なのかな。

他人の幸せを奪うってことは・・・


いや、僕はそれでいい。

他人の幸せを奪う存在でいいんだ。


今日も僕は他人の幸せを奪うために











殺したい。
人を殺したい。

俺は殺人狂

何回刑務所に行ったかなんて覚えてない。


俺は人を殺すことが大好きだ。


他人の人生を自分で左右できるなんて

すげえ魅力的じゃねえか?








町政から見放されている路地。
ここは薄暗く、犯罪の温床。

彼 と 男 はそこにいた。

男は彼が人を殺した姿を認めて、ニヤリと笑って言った。

「最近世間騒がせてる通り魔ってのはお前か・・・」

「そちらこそ、騒がせている存在だろう?」

彼は男に言葉を返す。

「お互い様ってことだな・・・」

「むしろ、貴様の方が騒がしいんじゃないのかい?」

「そんな変わらんぜ?  ・・・それよりも、殺させてくれや。
 俺は殺すのが楽しくてたまらねえんだ。」

ナイフを出し、男は下衆な顔をしてねちっこく言った。
彼もその姿を認め、ナイフを取り出す。

「貴様の幸せ、奪ってやる。」









あれ

なんで僕は 


倒れているんだ?


この血は?


相手はナイフを持ってたんじゃなかったのか?


目が霞む。

でも、微かに見える。
奴はナイフを持ってない

辺りに立ち込めた、硝煙の匂い。





そうか








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