狂歌 四話
式場は凄惨な光景だった。
花嫁のドレスは血に染まり、新郎の男はそれを見て泣き叫んでいた。
そこに花嫁の足は無かった。
「対人爆弾・・・忌まわしきものだけど、面白いよ。」
戦場で足手まといを作るための爆弾。
殺さずに、体の局部を吹っ飛ばす為の物。
「なんで・・・」
男はそれを繰り返した。
自分の花嫁は血に染まり、足は無い。
男だけ助かっている。
「なんで・・・」
狂ったかのようにその言葉を繰り返す。
「俺は・・・さっきまで・・・」
幸せだった自分を思い出す。
しかしすぐに全てが壊れた今に引き戻される。
そして花嫁の消え入りそうな声。
「いたいよ・・・」
花嫁は目にたっぷりの涙を溜めて言った。
男はまだ、ずっと言葉を繰り返す。
「誰だよ・・・」
男は同じ言葉を繰り返す。
観客から、あちこちの啜り泣き。
そして、怒号。
彼は不快だった。
涙を見ることが嫌だった。
でもそれだけじゃ不快になったことは無い。
何故なんだろう。
何かを・・・奪われた涙
幼い頃に流した涙。
自分は母親にひっついて、泣いている。
母親は借金取りに連れてかれそうになっている。
母親は少年を振り払い、男達と消えていく。
数日後
戻ってきたのは、母の亡骸。
男達は満足そうに家に戻り、少年を追い出した。
大切な物を 奪われた涙。
一度きりの涙を
「・・・全部、消えろっ!」
彼は式場から足早に立ち去り、もう一つボタンを押した。
式場から凄まじい爆発音がした時、彼の頬に嫌な物が流れた。
幸せを奪う者 か
僕はただ嫉妬してるだけなのだろうか。
僕は、本当の悲しみってのを見たことがなかったのかな。
嫉妬して、奪って
僕は・・・
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